はじめに
子どもたちに大人気の「ようかいしりとり」をご存じですか?
これは、絵本作家のおくはらゆめさんが歌詞とアニメーション原画を手がけた作品で、歌としても絵本としても多くの子どもたちに愛されています。
我が家では、娘と一緒に「ようかいしりとり」を口ずさむのが日課になっています。
テンポのよいリズムに合わせて歌っているうちに、自然と妖怪の名前を覚えたり、姿を想像して盛り上がったりします。
調べてみると、歌に登場する妖怪たちはただのキャラクターではなく、昔の人々の生活や自然への畏れ、願いが映し出された存在でした。
「この妖怪は何を表しているのかな?」「どうしてこんな話が残ったんだろう?」と娘と話しながら読み進めると、まるで絵本や物語を共有しているような温かい時間になります。
この記事では、「ようかいしりとり」に出てくる全22体の妖怪を紹介します。
親子で歌を楽しみながら妖怪を調べていくと、昔の人々の知恵や文化を感じられるはずです。
ぜひ、ご家庭でも一緒に歌いながら妖怪の世界をのぞいてみてください。
目次
- 一番の歌
- 二番の歌
一番の歌
① ろくろっくび

ろくろっ首は、首が異常に伸びる女性の姿で語られる日本の妖怪です。伝承には、大きく分けて2つの型があります。
- 首飛びタイプ:首が身体から抜けて飛び回り、人を驚かせたり血を吸うこともある。胴体を動かされると戻れなくなる弱点がある。
- 伸び首タイプ:眠っている女性の首が蛇のように長く伸びる。
江戸時代の絵巻や文献にも多く登場し、女性に多い妖怪として知られています。不幸をもたらすとされ、長く恐れられてきました。
② びんぼうがみ

貧乏神は、取りついた家や人に貧困をもたらす妖怪です。薄汚れた老人の姿で描かれ、痩せこけた体に青白い顔をし、手には渋団扇を持ちます。
怠け者を好み、家に住み着くと財産が減ると伝えられています。一方で地域ごとに追い払う習俗もあり、新潟では大晦日に囲炉裏で火を焚いて追い出す、愛媛では囲炉裏の火を掘り返すと現れるなどの俗信があります。東京都には貧乏神を祀る神社もあり、逆に福を招く存在として信仰されています。
③ みつめこぞう

みつめ小僧(みつめこぞう)は、額にもう一つの目を持つ子どもの妖怪です。三つ目の目で、嘘や隠し事をすべて見抜いてしまうといわれています。
その姿は幼い童子のようですが、じっと見つめられると心を読まれているようで、人々に恐れられてきました。地方によっては、タヌキが化けた姿とも伝えられています。
江戸時代の絵巻や怪談にも登場し、外見はユーモラスでありながらも、「人の心の奥を暴く存在」として不気味さが際立つ妖怪です。
④ うみぼうず

うみぼうずは、荒れた海に突然現れる巨大な妖怪です。黒々とした大きな坊主頭だけが海面に浮かび上がり、船乗りたちを震え上がらせます。
伝承によれば、うみぼうずは航海中の船に近づき、「杓子(しゃくし)を貸せ」と求めることがあります。これに大きな杓子を渡してしまうと、船に海水をどんどん注ぎ込み、やがて転覆させてしまうといわれています。逆に、小さな杓子を渡せば、うまく対処できるという話も残っています。
その正体については諸説あり、海上の蜃気楼や自然現象が元になったとも考えられていますが、昔の船乗りにとっては、航海中に出会えば命に関わる恐ろしい存在でした。
⑤ ずんべらぼう

ずんべらぼう(のっぺらぼう)は、顔に目・鼻・口がなく、つるりとした顔で人を驚かす妖怪です。夜道や川辺に現れ、最初は普通の人間に見えますが、近づいてきたときに顔が真っ白で何もないことに気づき、人々を恐怖に陥れます。
江戸時代の怪談や絵巻にもたびたび登場し、特に「むじな」と呼ばれる狸や狐が化けた姿とする説もあります。単純な姿ながら、人間にとって最も身近な「顔」が失われることで、強烈な不気味さを与える妖怪です。
その不可解さとインパクトから、昔も今も語り継がれる代表的な“見せて驚かすタイプ”の怪異といえます。
⑥ うまつき

うまつきは、馬の霊が取りついて人に災いをもたらす妖怪です。特に、馬を粗末に扱った人が祟りを受け、取りつかれるといわれています。
取りつかれた者は、馬のような鳴き声を発したり、四つん這いで駆け回ったりと、人間でありながら馬のような振る舞いをするようになります。その異様な姿は、周囲の人々に恐怖を与えました。
この妖怪は、農耕や運搬に欠かせなかった馬を大切にする教えと深く結びついています。命あるものを粗末にすれば祟りが返ってくる――人々の戒めや畜生への敬意が、うまつきという存在に投影されているのです。
⑦ きつねび

きつね火(きつねび)は、夜道にふわりと現れる青白い光で、狐が起こす怪火とされています。田畑や山道に浮かび上がり、人々を惑わせたり、不思議な行列をつくるように見えることもあります。
その姿は恐ろしくも幻想的で、古来より農耕文化や稲荷信仰と深く結びついてきました。農民たちはこれを「狐が神秘の力を示すしるし」とも考え、単なる怪異以上の存在として受け止めていたのです。
地域によっては吉兆とされる場合もあり、きつね火は “畏れと神秘の両面” を持つ、日本的な妖怪の代表例といえるでしょう。
⑧ ビジンサマ

ビジンサマ(美人様)は、長野県などに伝わる山の神格的な存在です。妖怪というよりも「山の霊」として語られることが多く、山に入る人々の暮らしや信仰と深く結びついています。
姿は黒雲に包まれた丸い玉のように現れるとされ、その日を境に山仕事をしてはいけない「忌み日」になると伝えられています。これは、山に棲む神が休む日を人々に知らせるものとも解釈されます。
「美人様」という呼び名から華やかな印象を受けますが、実際は山を畏れ敬う気持ちが形となった存在であり、自然と人間の距離感を教えてくれる民間信仰の象徴です。

⑨ まくらがえし

まくらがえしは、夜寝ている人の枕をひっくり返す妖怪です。起きたときに頭の位置が変わっているため、人は強い不気味さを覚えます。
小さな子どものような姿や、座敷わらしに似た姿で描かれることもあり、ただのいたずら好きの妖怪とも言われます。しかし一方で、眠りや魂に関わる存在とみなされることもあります。古来、日本では枕を「魂が宿る場所」と考える信仰があり、その位置が乱れることは不吉とされました。
このため、まくらがえしは単なる怪異ではなく、睡眠や生命に対する畏れが生み出した妖怪といえるでしょう。
⑩ しらぬい

しらぬい(不知火)は、海上に現れる謎の光の怪です。旧暦八月の風の弱い夜に、熊本県の八代海や有明海の沖に無数の火が並んで見えると伝えられています。
その姿は、まるで人の手にした松明が海上を行き交っているかのようで、昔の人々に強い畏怖と神秘を与えました。「不知火」という名は、“どこからともなく現れる火で正体が分からない”ことに由来します。
現在では、大気の屈折や光の反射による蜃気楼現象の一種と考えられていますが、地域では今なお祭りや伝承に残り、自然への畏敬と不思議さを象徴する存在となっています。

⑪ いったんもめん

いったんもめんは、長さ一反(約10メートル)の布が夜空をひらひらと飛ぶ妖怪です。鹿児島県の伝承で知られ、人の顔や体に巻きついて窒息させると語られています。
見た目はただの布切れですが、突然空を舞う姿は不気味で、夜遊びや外出を戒める教訓として語られてきました。その反面、現代では『ゲゲゲの鬼太郎』などに登場し、親しみやすい妖怪キャラクターとしても愛されています。
いったんもめんは、日常にある身近な布が恐怖に変わるという点で、人々の想像力と畏怖を映した存在といえるでしょう。
二番の歌
⑫ ざしきわらし

ざしきわらしは、家の座敷に現れる子どもの姿をした妖怪です。岩手県を中心とする東北地方で広く伝承されており、家に住み着くとその家は繁盛し、逆に去ると家運が衰えるといわれています。
見た目は5〜6歳ほどの童子で、赤い顔をしたり、髪を乱したまま遊んでいたりする姿で語られます。ときには夜中に人の布団へ潜り込んで眠るなど、いたずら好きな一面もあります。
現代でも「ざしきわらしが出る宿」として観光資源になっている場所があり、人々に福を招く霊的存在として親しまれています。一方で「見なくなったら家が没落する」という伝承もあり、幸福と不安が同居する妖怪といえるでしょう。
⑬ しちほだ(七歩蛇)

しちほだは、咬まれると七歩も歩かないうちに死んでしまうといわれる恐ろしい毒蛇の妖怪です。体は小さいながらも、四本の足や耳を持つ姿で描かれることが多く、ただの蛇とは異なる異形の存在感があります。
この蛇に襲われた人は激しい苦しみに襲われ、すぐに命を落とすとされ、人々に強烈な恐怖を与えてきました。さらに、大量に湧き出て群れをなすという伝承もあり、その脅威はより一層増しています。
しちほだは『伽婢子(おとぎぼうこ)』(江戸時代の怪談集)にも登場しており、古くから猛毒と群れの恐怖を体現した妖怪として語り継がれてきました。
⑭ だいだらぼっち

だいだらぼっちは、山や湖をつくり出すほどの巨体を持つ大巨人の妖怪です。日本各地に伝承があり、その土地の地形と結びつけて語られることが多い存在です。
たとえば、山を動かしたり、湖を掘ったりした跡が「だいだらぼっちの足跡」だとされる伝承があります。関東では富士山を持ち上げた、信州では諏訪湖を掘った、など各地でスケールの大きな逸話が残されています。
その圧倒的な力から恐れられる一方で、地域によっては土地を整え人々の暮らしを助ける存在として描かれることもあります。だいだらぼっちは、自然の壮大さを人格化した象徴的な妖怪といえるでしょう。
⑮ ちょうちんおばけ

ちょうちんおばけは、古くなった提灯が化けて妖怪となったものです。提灯の紙が破れ、そこから大きな一つ目がのぞき、長い舌をだらりと垂らした姿で描かれます。
火を灯したまま提灯を粗末に扱ったり、長年放置したりすると魂が宿り、この妖怪に変わると信じられてきました。夜道にふいに現れて人を驚かすことから、昔は子どもへの「夜更かしの戒め」として語られることもありました。
ちょうちんおばけは、付喪神の一種とも考えられ、「物を大切にしなければ祟る」という教えが込められています。ユーモラスな見た目で親しまれつつも、生活の知恵を伝える妖怪でもあるのです。
⑯ けらけらおんな

けらけらおんな(倩兮女〈けらけらおんな〉)は、甲高い笑い声をあげ続ける女性の妖怪です。夜道や町外れに現れ、けらけらと響く笑い声で人々を不安にさせます。
その姿は、やつれた女性や、髪を振り乱した異様な女として描かれることが多く、目撃者は「笑い声が耳から離れず、恐ろしさが倍増する」と語ったといわれます。
江戸時代の絵師・鳥山石燕が著した『今昔百鬼拾遺』にも描かれており、当時から人々に強い印象を与えていた存在です。「笑う」という本来明るい行為が恐怖に転じる妖怪として、今も語り継がれています。
⑰ なきばばあ

なきばばあは、夜な夜なすすり泣く声をあげる老婆の妖怪です。人気のない路地や山里で「うえーん、うえーん」と響く声を聞かせ、人々を不気味な恐怖に包み込みます。
その姿は背の曲がった年老いた女性とされますが、泣き声ばかりで近づくと姿が消えてしまう、あるいは幻のように見えるともいわれています。
泣き声の理由は語られることがなく、ただ不安をかき立てるだけの存在です。こうした伝承は、夜更かしや夜道を歩く子どもへの戒めとも考えられています。
⑱ あまのじゃく

あまのじゃくは、人の言葉や行動に逆らうことを好む小鬼の妖怪です。人が右へ行けと言えば左へ行き、泣けと言えば笑う――そんなひねくれた性質から「天邪鬼(あまのじゃく)」という言葉が生まれました。
昔話では、あまのじゃくはしばしば人をからかい、いたずらを仕掛ける存在として登場します。特に有名なのが「瓜子姫とあまのじゃく」で、瓜から生まれた美しい娘をだまして連れ去る役どころを担っています。
その行動は一見ただの意地悪に見えますが、人の油断や欲深さを試す存在としての側面もあります。あまのじゃくは、昔から人間の心の弱さを映す鏡のような妖怪とされてきました。
⑲ くらげのひのたま

くらげの火の玉は、海辺にふわふわと漂う不思議な光として語られる妖怪です。その名のとおり海月(クラゲ)のように浮遊し、夜の海を青白く照らします。
江戸時代の奇談集『三州奇談』には、海辺で侍がこの火の玉を斬ったところ、二つに割れて消えたものの、顔にぬめりが残ったという逸話が記されています。その様子がまるでクラゲの粘液のようであったため、名が付いたとも考えられています。

正体は、海辺に生じる怪火や、クラゲが放つ光を見間違えたものともいわれます。しかし人々にとっては、昼は穏やかな海が夜には恐怖を秘めることを象徴する妖怪でした。
⑳ まめだぬき

まめだぬきは、豆粒のように小さな姿をしたタヌキの妖怪です。体は小さいながらも人を化かす力は一人前で、むしろ油断させやすいぶん厄介な存在ともいわれています。
人を迷わせたり、ちょっとした悪戯を仕掛けたりしますが、大タヌキのように大きな害を与えることは少なく、どこか憎めないキャラクターとして語られることもあります。
地域によっては、祭りや酒の席で陽気に人をからかう存在として描かれ、小さくても侮れない妖怪として人々の暮らしの中に親しまれてきました。
㉑ きむないぬ

きむないぬは、アイヌの伝承に登場する山の精霊のような存在です。名前はアイヌ語で「山にいる人」を意味します。
その姿は小柄で、頭がはげていることが特徴とされます。山仕事をする人々を手伝ってくれることもありますが、逆にからかわれると怒り、祟りをなすともいわれています。特に「はげ頭」を笑うと激しく怒り、災いをもたらすと伝えられています。
また、煙草を好むとされ、山で出会ったときに煙草を差し出すと機嫌を直してくれるという話も残されています。
きむないぬは、山の豊かさと恐ろしさをあわせ持つ存在であり、自然を敬い、軽んじてはならないという教えを伝える妖怪です。
㉒ ぬらりひょん

ぬらりひょんは、人の家に勝手に上がり込み、いつの間にか居座ってしまう妖怪です。気づくと座敷の上座にどっかりと座り、まるでその家の主であるかのように振る舞います。
姿は頭が大きく、ひょうたんのように丸みを帯びた老人として描かれることが多いです。その態度は堂々としており、追い出そうとしても取り合わず、気づけば茶をすすっている――そんな掴みどころのなさが特徴です。
江戸時代の絵巻や文献では“招かれざる厄介者”として描かれていましたが、現代では「妖怪の総大将」という位置づけで知られるようになりました。これは水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』で大きな役割を与えられた影響が大きいとされています。
ぬらりひょんは、日常に潜む違和感と不気味さを体現する妖怪であり、その不思議な存在感が時代を超えて人々の想像を惹きつけてきました。
まとめ
「ようかいしりとり」に登場する22体の妖怪は、それぞれが人々の生活・自然への畏れ・信仰と結びついて生まれた存在です。
歌に触れることで、昔の人々の暮らしの知恵や想像力に触れることができます。
👨👩👧 娘と一緒に楽しむ中で、特に印象に残った妖怪は次の3つでした。
- ざしきわらし:家に福を呼び、去ると家運が衰えるという存在。娘と「もし見えたらいいことが起きるね」と話せるような、温かさと少しの不安が同居する妖怪です。
- あまのじゃく:人の言うことに逆らう性格は困りものですが、人間の油断や欲を試す存在でもあります。子育ての中で「ちょっと天邪鬼だな」と感じる瞬間もあり、日常とつながる面白さを感じました。
- しらぬい:夜の海に並ぶ謎の光は幻想的で、自然現象と伝承が重なり合う不思議さをもっています。実際の風景を想像するとワクワクし、伝承を通じて自然への畏敬を再確認できました。
皆さんもぜひ親子で「ようかいしりとり」を楽しみながら、日本文化に触れてみてください。










コメントを残す