僕は廃墟が好きだ。人の気配が消え去った場所には、かつての賑わいの記憶が刻まれている。そんな場所に、僕は心惹かれる。
2017年2月14日のこと。僕は鶴見線の国道駅に降り立った。ここは廃墟ではないが、どこか廃墟のような雰囲気が漂う場所だ。
駅のガード下に足を踏み入れると、まるで時が止まったかのような感覚に襲われる。外から差し込む光がまぶしく、現実の世界との境界を曖昧にしている。
改札口にはSuicaの読取機が設置されているが、その存在が違和感を醸し出している。時代の流れと、この場所の静寂との間に不協和音が生じる。
ふと横を見ると、何とも言えない存在感のあるカラスの模様が。調べてみると、鳥の糞害を防ぐための対策だという。無機質な駅に異質な生命感を与えている。
ガード下には「国道下」という焼き鳥屋があり、営業を続けているようだ。その姿はまるで、止まった時の中で唯一動き続ける存在のように感じられた。
自動販売機も健在で、ここでの生活の名残を感じさせる。
外に出ると、JR国道駅の看板が目に入る。さらに目を引くのは、右側の建物の正面外壁に残る、第二次世界大戦中の米軍による空襲の銃痕。歴史の傷跡が、ここにも刻まれている。
ガード下から外に出た瞬間、止まっていた時が急に動き出したかのようだった。現代の喧騒に包まれながらも、心の片隅には今も国道駅の静寂が残っている。
廃墟感漂う国道駅。この場所は、時の流れと人の記憶が交差する、不思議な空間だった。
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